婚約破棄の慰謝料

婚約を正当な事由なく、一方的に破棄・解消された当事者は、相手方に対し損害賠償を請求することができます。この損害賠償は、婚姻が成立することを前提とし、これを信頼して支出した財産損害、逸失利益、精神的損害につき、賠償を求めることができます。

財産損害

婚姻披露の費用、仲人への礼金、結婚式場の申込金・キャンセル料、新婚旅行の申込金・キャンセル料などが、損害として認められます。

逸失利益

婚約が成立し、結婚のために退職した場合や、転任・転職をした場合は、そのような事情がなければ得られたであろう給料分が、損害として認められます。

精神的損害

交際の期間、婚約解消の時期、婚約解消に至る事情、妊娠の有無、婚約解消による苦痛の大きさなどを総合的に考慮して決定されます。

※精神的損害の額は、離婚の場合に比べると、全般的にやや低額になる傾向にあります。

◆婚約を正当な事由なく、一方的に破棄・解消された当事者は、相手方に対し慰謝料(損害賠償)を請求できますが、慰謝料を請求する場合には、まず双方の話し合いによる円満な解決を試みましょう。相手方が婚約を破棄したことの非を認めている場合には争うことなく支払ってくれる可能性もありますので、いきなり内容証明郵便や訴訟を起こして、相手方の支払う気持ちを削いでしまう可能性もある行動は避けた方が賢明です。しかし、相手が話し合いに応じない場合には、内容証明郵便による請求をした方がいいでしょう。

また、慰謝料を請求する場合、つい感情的になって高額な慰謝料を請求しようとお考えになられる方が多いですが、それは、お互いの話し合いで解決をする場合には逆効果となり、解決するものもしなくなる可能性がありますので慎重に行動しましょう。

婚約破棄の財産的損害

結納金

結納の法的性質については、婚姻の成立を目的とする贈与と考えられています。

裁判例は、婚約の証しであるという点も加味して、「結納は婚約の成立を確証し、併せて婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与である」(最高裁昭和39年9月4日判決)と解しています。

よって、婚約が解消になったときは目的が達成されなかったわけですから、受け取った方は不当利得として相手方に返還されることになります。

しかし、婚約解消についての責任が、結納を送った側にのみある場合は、自らの責任で婚約解消という事態を招いておきながら、結納金は返してもらうということは信義誠実の原則または権利乱用の法理からして、結納金の返還を請求することはできないと考えられています。

なお、結納を受け取った側にも婚約解消についてある程度の責任がある場合は、双方の責任の度合いを比較して、結納を送った側の責任が結納を受け取った側の責任よりも重いときは、結納の返還請求が認められないものと考えられます。

【民法第1条】(基本原則)
① 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
② 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
③ 権利の乱用は、これを許さない。

【民法第703条】(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

婚約指輪・結納返し

婚約指輪は、婚約解消の責任が送った側にある場合、責任がある相手方からの返還請求や代金支払請求については拒否することができると考えられます。

また、結納返しの品については、婚約解消に伴い返還を請求することができます。結納返しは、婚約解消により意味を失い、相手方の不当利得にあたるからです。

嫁入り道具の購入費用

新婚家庭に備えて、家具や種々の衣装等を購入した場合、購入したものは財産として残るので、購入代金がそのまま損害額となりません。

裁判例は、無駄になった嫁入り道具について、それを購入したときの金額と売却処分により得た金額との差額を損害額として認めたものがあります。他に、無駄になった嫁入り道具が残存しているケースでは、無駄になった嫁入り道具の購入代金の7割を損害額と認めたものがあります。

婚約破棄と第三者への賠償請求

第三者の行為が原因で婚約破棄に至った場合、不当に破棄された側は、その第三者に対して損害賠償の請求をすることができます。

なお、婚約解消の理由として、一方当事者の親族の反対などがある場合がありますが、本人の責任と親の責任は別の問題とされます。裁判例で、親が結婚をしたがっている子に対して、婚約の相手方の親族との円満な協力関係がみこめないので婚約を解消するように強く説得した場合、それだけでは親に対しては損害賠償の請求はできないとされています。

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